暗イ夜ニ/火ハドコニアル

おぎゃあとこの世に生まれ出でてはや21年、自分に都合のいいような妄想と脳内変換で世の荒波を悉く避け逃げ隠れてきた俺僕ワタクシトヤマ@ヒッキー大学生だが、最近ようやくどうにももがくことのできない苦しみに直面するに至り、つくづく自分も大人になったのだなぁと実感することであるのだよ?
結局自分の感じている苦しみの正体が何かと言えば、今まで一致してきたリアルとイデアに突如としてずれが生じた結果、矛盾を解決するために何かを犠牲にしなければならない、その何かを選ぶのに疲れているわけで。何にしろこの数年間、心血を注いで努力して築きあげたその成果は無になってしまうし、今まで周りも見ずに突っ走ってきて気がつけば俺の手には何も無く、新たに何処へ走っていくのか、その目標もまだ見つけてはいない。
周りの友人も、今まで走ってきてやっと大任が解かれたらあまりの虚無さに不安になってしまった奴、こつこつがんばってきたがいきなりがんばっている意味がわからなくなってしまった奴など、どうにも調子が悪い奴らが集まってる。イッタイココハ地ノ果テカ。
みんな今までは振り返ることなく、前を見て走って行けたのに、大人になってしまったから、立ち止まって後ろを見てしまって、動けなくなってしまったのだ。

嵐のごとく叩きつけてくる雨の下、どこだかも判らない山の中で初めて煙草に火を付けた。友人と二人、沈痛した空気の中で吸い込んだ煙は苦くて甘かった。どんなに言葉を吐き出そうとも苦しみは和らがないし、お互い助けることもできない。それぞれが自分の苦しみに潰されて弱弱しく息をすることしかできない。それでも、ただ一緒に紫煙を燻らせているだけでも、自分独りであるよりどれほど助けられることだろうか。
生まれてこの方、どうしようもなく暗い夜だった。本当に黒い黒い夜だった。空は変に白くて明るくて、山は真っ暗で。隣に小さく赤い火が灯っていた。俺の指先にも小さく弱く、赤い火が燃えていた。