こうして夜が明け始める頃。
小鳥も正に日常の如く、空が明るくなるにつれチュンチュンと囀り始める。奴等は健全でオレは健全ではないということなのだ。
じきに世界は起きだしみなそれぞれの義務を果たそうと動き出す。人も小鳥も空気すらも、それぞれの義務を全とうするだろう。
しかし私はこうしてワインを飲みながら、自分の世界に外れることを呪っている。自分に合わない世界が憎いのか、世界に迎合できない自分が憎いのか。
将来の生業について考えつつ、そんなものがどうだというのかと私は反論する。もうひとりの自分となどと陳腐な言葉を使うつもりはない。ただ単に弱気なだけである。ある時は死をも恐れず己の意志を貫き通すことだけを望み、ある時は己の果てに待ち受ける破滅を前に目を覆い。例え世界が滅ぼうとどんな時にも我が人生にとって自らだけが正しいと大言壮語吹聴し。いかに目を瞑ろうとも、今の現実が夢に変わるわけでもないのに、ただその場限りで己のおぞましい未来から目を背けようとする。その繰り返し繰り返しにいずれ精神は崩れるだろうと予測してしまう。
こんな酔いどれた気分の時は。こんなどうしようもない時にはとノートとプリントの山を掻き分ける。三年と半分、「何か」を学んできたはずの証を必死で掻き分け探すも見つからない。実家に置いて来てしまったのかと遥かに思いを寄せる。こんな時にブコウスキーを読んだのなら、自分はきっと何かを、――それが酔いどれの一瞬の盛衰でもよい――何かを得られるのかもしれないと思ったのに。
何でもいい。ただ今の自分をずたずたに引き裂いてくれる言葉が欲しい。
心から願った。
(0531時)